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Part 3

──学園都市、全土に──​

 

──出現する──​

 

──黒色の怪球──​

 

【──展開──】​

 

【──開始──】​

 

【領域 (ドメイン) 支配を強化します】​

 

【神体への負荷はありません】​

 

【ひとは、我々を認識できない】​

 

【回収開始】​

 

【イースの偉大なる鐘を回収します】​

 

【都市に、永劫休眠状態 (ルルイエ・モード) を強制します】

 

ゆっくりと──​

 

ゆっくりと、怪球が学園都市に上陸する。

ゆっくりと、無数の怪球が次々と。

ゆっくりと、人工島を覆い尽くす。​

 

すべての動力が停止した、

静寂の学園都市を。​

 

すべての人々が眠りに落ちた、

無音の学園都市を。​

 

黒怪球、その数実に2000体。

不気味に蠢くそれらが一斉に目指すのは──​

 

──学園都市、中心部──​

 

──すなわち──​

 

──ディフの塔 (シャトー・ディフ)──​

 

疾 (はし) る。疾る。疾る──​

 

疾走する影、ひとつ──​

 

浜辺の砂を踏み砕きながら、疾る。

夜気の冷ややかさを壊して、疾る。

ただ一陣の烈風となって暗がりを駆ける!​

 

何よりも迅い影。

何よりも猛る影。

足下の影さえ残さずに影は疾っていく。

 

怒れる影。

雷なる影。

──影の名は、ニコラ・テスラといった。​

 

雷電感覚、全種起動。

雷電芯核、全力起動。

雷電兵装、全開起動。​

 

認識を最大限に拡大。

走査──​

 

何処だ。​

何処にいる。​

何処で見ている──!​

 

怪球出現の直後、

彼は飛空艇を出て海へ疾っていた。​

 

疾走しながら姿を変える。

人ならぬ雷電に。

猛々しき雷電に。​

 

その腰部には機械の帯 (マシンベルト)。​

その両手には機械の籠手 (マシンアーム)。​

たなびく黒い襟巻は激しく雷電を帯びて。​

 

遠い異国の服を纏い、

空の果ての雷を纏い、

刹那に、疾走のままに姿を変えて。​

 

 

[Tesla] ──ッ!​

 

拡大させた認識で捉える。

いた、あそこだ。

 

怪球に呑まれた少女の、

ネオンの生体反応は健在。生きてはいる。

体温正常、負傷を受けた様子は未だない。​

 

だが──​

届かなかった。​

 

敵の出現及びネオンの確保、

こちらの攻撃を回避しての空間離脱。​

 

有り得ない迅さだった。

地上の存在に有り得る速度ではない!​

 

この雷電を上回るもの。

正しき物理に依らざるもの。

およそ、幻想なりし我が身と同じくして──!​

 

[Tesla] ──そこ、か。​

 

暗がりの浜辺の一点にて立ち止まり、

白の彼は海を見る。​

 

昼間の穏やかさとは異なる、

永遠の暗がりそのものである昏い深淵を。​

 

深淵。魔の気配。

黄金の魔たる薔薇十字 (ローゼンクロイツ) とは違う。

これは、もっと旧きものの気配。​

 

海の深淵。

海の遺跡。

であれば、その正体は──​

 

[Tesla] 見ていたな。

           今まで、お前はそこでずっと。​

 

[Tesla] 我が認識領域を狂わせて──​

 

感覚を調整する。

基底現実を観測する視覚、感覚から、

世界の果てを見据える雷の両瞳へと。​

 

変える。​

見える。​

わかる。​

 

そこに、果たして何がいるのか。

否。最初からいたのだ。​

 

この島へ足を踏み入れた時には、既に。

もしくは、もっと以前より。​

 

一体、いつから──?​

 

[Tesla] 成る程。

           我が眠りが深くもなる訳だ。​

 

[Tesla] 学園都市も、この島も、

           貴様の支配領域 (ドメイン) であったという訳か。​

 

[Tesla] 水なるもの、

           たゆたう黒。

           それらはすべて貴様の一部。​

 

声に──​

 

[Tesla] なればこそ、理解はできる。

           ディフの塔に残る権能を求めるか。​

 

雷電、混ざり──​

 

[Tesla] その生存執着は哀れの一語。

           だが──​

 

紫電が──​

 

[Tesla] ネオンは返して貰うぞ。

           深淵にてたゆたい、微睡むもの!​

 

彼の周囲に、走る──!​

 

[Tesla] 旧き世界に死せるもの!

           遠き空より顕れて、夢見るものよ!​

 

[Tesla] 汝、海魔の王。

           たゆたう水にして押し潰す波濤!​

 

[Tesla] ──星砕きし水の塊 (クトゥルー)!​

 

──赫い──​

 

──輝きを湛えて──​

 

──海中から湧き上がる巨体──​

 

──巨大なる死の巨人──​

 

──無貌なりしもの──​

 

──夢見て眠る旧き、虚なる神──​

 

──虚神、彼を睨め付けて──​

 

──咆哮する──​

 

『ニコラ・テスラ!』​