JustPaste.it

Part 4

『ニコラ・テスラ』​

 

──虚神、が──​

 

──神なる旧き支配者 (グレートオールドワン) が──​

 

『ニコラ・テスラ』​

 

──彼を、喚んでいる──​

 

『ニコラ・テスラ』​

 

──死そのものを声として──​

 

『ニコラ・テスラ』​

 

──深淵の憤怒と共に──​

 

偉容。威容。異様。

まさしくひとを圧倒させるものが、在った。

まさしく神なる偉容にして威容なる異様が。​

 

海中から起き上がり、

その硬く柔らかな巨躯を濡らしながら。

今、ここに、神の巨体が出現していた。​

 

実に、巨体は百五十フィートを超す。

遺跡島さえ見下ろす巨体!​

 

雷電感覚が告げる。

地上に在らざる巨体の構成要素を。​

 

イリジア鋼 (イーリディーム) で構成された巨体。

それは遠くカダスに眠る神体。

有り得ざる、神々の揺籃たる超鋼の機体。

 

その体躯は超鋼にして、

その体躯は深淵にして、

その体躯は物理を超える神秘そのもの!​

 

遠き過去、遠き太古。

世界そらの果てより異境 (カダス) へ降り立った神の虚体。

 

この世界に在らざるもの。

この地球 (ほし) に在らざる、機械仕掛けの神。​

 

カダスの果てで眠りたゆたうはずの、

あらゆる幻想の王種。

あらゆる太古の源泉。​

 

既に死して、

既に、眠り、

地上に在らざる幻想の顕現どもの象徴!​

 

いてはならないもの。

いるはずがないもの──​

 

それが、何故ここにいる?

彼は疑問を感じながらもすぐに捨てた。​

 

疑問など。意味はない。

意味、あるとすればただひとつ!​

 

あれは我が愛しい輝きを奪った!

ただ、その一点のみ!​

 

[Tesla] 我が名を呼ぶか!

           深淵なりし旧き支配者よ!​

 

[Tesla] 私は貴様に応えない。

           先刻呑んだ輝き、直ちに──​

 

[Tesla] 返して貰うッ!!​

 

叫び──​

 

彼は、右腕を高く空へと伸ばす!

暗がりの夜の空へ。

灰色と黒色の空へ。​

 

声と動作に対応して反応するのは、

周囲に浮かぶ光剣5本!​

 

光の刃が見る間に消えて、

柄のようにも見える黒芯が彼の目前、

そして腹部の中央へ──​

 

[Tesla] ……借りるぞ。​

 

呟き、彼は黒芯の先端部を抜き取る。

チェスの駒めいた剣針、

彼の手中に総じて5本。​

 

それらを──

今まさに、中央機械部へと!​

 

迷わず差し込む!

視線、超鋼の虚神へ向けたまま!​

 

第1の剣針が中央機械部に刺さる。​

 

『トール』​

 

第2の剣針が中央機械部に刺さる。​

 

『ヴァジュラ』​

 

第3の剣針が中央機械部に刺さる。​

 

『レイ=ゴン』​

 

第4の剣針が中央機械部に刺さる。​

 

『ユピテル』​

 

第5の剣針が中央機械部に刺さる。​

 

『ペルクナス』​

 

駒めいた剣針総じて5本、

雷の神の名を冠した5本、

機械帯 (マシンベルト) の中央機械部へと挿入果たして。​

 

僅かに、呟く。

空の果てへと向けて──​

 

[Tesla] ──超電磁形態。来い!​

 

──巨大な鎧──​

 

──姿を、顕して──​

 

──白銀の装甲が煌めいて──​

 

──閃光が弾ける──​

 

──轟雷が鳴り響く──​

 

まばゆい光と共に──​

大気が叫び、暗闇と共に空間が裂ける。

雷電が迸り、轟音と共に時間が砕ける。​

 

光纏う鎧が、顕れる。

それは白銀色をした輝きだった。

それは異空の果ての輝きだった。​

 

空の彼方から来たるもの、

灰色に染まった空を超えて来る。​

 

あらゆる物理法則を従えながら

姿を見せる、巨大な人型。​

 

その四肢は超鋼ならず鋼鉄であり、

その四肢は深淵ならず白銀であり、

その四肢は神秘ならず雷電、そのもの。​

 

そして、揺るぎない意思が盾となり、

引き裂く憤怒が剣となる。​

 

白銀の──​

 

巨大な、騎士──​

 

[Tesla]『──ネオン。我が輝き』​

 

[Tesla]『其処にいるな。 

              私は、必ず、お前を取り戻す』​

 

[Tesla]『天届く虚神顕れようとも、 

              鎧を纏い、私は、お前の元へ来る』​

 

あらゆる物理を従えながら、

腕を組み、輝きの中で騎士は言った。​

 

その頭部には巨大な翠の宝玉が。

その周囲には眩い輝きが。​

 

迸る雷電は絶えず鎧の周囲を舞って、

白銀の装甲には黄金の意匠。​

 

数十フィートを超す鎧を纏い、

空の果ての雷を更に多く纏い、

刹那に、彼は、騎士へと変わっていた。​

 

──そして──​

 

──騎士の瞳、輝いて──​

 

──周囲に浮かぶ銀の盾、4つ──​

 

騎士の内部──​

胸部中心に位置する演奏席にて。​

 

彼は瞼を閉ざしていた。

意識、集中させて。​

 

電気騎士は彼のもうひとつの体躯。

電気騎士は彼の大鎧。

雷の鳳が遺した永遠の呪いのひとつ。​

 

弛まぬ集中が必要となる。

これは鋼鉄であって、鎧だが、

決して機械ではない──​

 

文字通りのもうひとつの体躯。

彼の全身から迸る雷電こそが、

生物に於ける神経と等しく働き、動く。

 

故に集中が必要となる。

騎士の全身を駆け巡る己が雷電の

疑似神経数万本を稼働させるには。​

 

脳が灼ききれる感覚。

彼が雷電ならぬ身であれば──​

 

刹那、絶命しているだろう。​

 

けれど、彼は、生きている。

弛まぬ集中の渦で──​

 

意識する。

集中する。

神経操作の鍵盤を引き出す!​

 

左右から自動展開する鍵盤ふたつ、

これが騎士の神経中枢!​

 

鍵盤のひとつひとつに

指置いて、さあ──​

 

今、始めよう。

今、見せよう。

死と隣り合わせの騎士の勲!​

 

瞼を開いて眼前を見やる。

視神経と繋がった騎士の瞳で。​

 

電気騎士の瞳越しに、

大いなる、星砕きし水の塊を見つめて。​

 

唇を開き──​

己の内より溢れる言葉を紡ぐ。​

 

[Tesla] 絶望の空に私は来る。

           雷を、剣として。​

 

[Tesla] 雷鳴と共に。

           私は、鎧を纏い顕れよう。​

 

[Tesla] ニコラ・テスラ超電磁形態。

           ──起動する。