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Part 6

例題です。

いいえ、これは例題ではありません。​

 

少年は敗れました。

戦士は敗れました。​

 

少年は幻想であるが故に無敵です。

無敵であるが故に幻想なのです。​

 

では、同じ幻想と相対すれば?

より大きな幻想は?​

 

呑み込まれてしまうでしょう。

そして、やがて消えていく。​

 

幻のようなもの。

影のようなもの。​

 

それは、消えて、忘れられていきます。

それが世界というものです。​

 

けれど、

もしも──​

 

誰か、ひとりが──​

 

望むなら──​

 

「以前の私であれば」​

 

「ここで、終わっていたのだろう」​

 

「だが……」​

 

「私には……」​

 

「我が第1の師の教え、胸に」​

 

「我が第2の師の機械帯、ここに」​

 

「そして」​

 

「我が雷電を迸らせる、 

    この、10万の輝きが……ある……」​

 

「故に、私は──」​

 

世界介入

 

【──入力──】​

 

【──承認──】​

 

【介入を開始します】​

 

【神体への影響が発生します】​

 

【基底現実を書き換えます】

 

輝き、が──​

 

迸るものがあった。

それは、ひどくささやかなものだ。​

 

空の果てに疾ったとしても、

誰もが目を留めるものではないだろう。

多くはその存在にさえ気付かないもの。​

 

けれど確かに。

それは、輝きだった。​

 

けれど確かに。

それはそこに在った。​

 

けれど確かに。

それを目に留める者はいた。​

 

故にこそ──​

 

電気騎士は再起動する。

電気騎士は再構成されて、立ち上がる。​

 

ニコラ・テスラは蘇る。

ニコラ・テスラは未だ世界に在る。​

 

立ち上がる。

立ち上がることが、できる。​

 

まだ。諦めない。

決して、諦めることはない。​

 

立ち上がれと呼ぶ声が聞こえる。

幻聴か。そうなのだろう。

けれど、それは同時に我が名を呼ぶはずだ。​

 

ならば──​

 

絶望の空に──​

我が名、呼ぶ声がある限り!​

 

[Tesla] 私は……。

           決して、諦めない。​

 

立ち上がる──​

 

[Tesla] 地上に輝き在る限り、

           絶望の空がすべてを覆い尽くそうと。​

 

立ち上がることが、できる──​

 

[Tesla] 戦い続けよう。

           たとえ、あなたが敵になろうとも。

           私には──​

 

今、ここで──!​

 

[Tesla] 我が輝きの子ら──​

 

[Tesla] そして、最愛なりし輝きが在る。

           それは、我が無限の電力である。

           故に私は斃れはしない!​

 

[Tesla] さあ、その盲いた赫瞳にて!​

 

[Tesla] 刮目せよ!

           我が師、チャールズ・バベッジ!​

 

~~~~~~

 

[Walter] 我が異能!

              我が加速!

              踏み砕け、巨いなりしは我が足撃 (タイタン・フィート)!!

 

[Berta] 併せるぞ──

            我流奥義、絶妙剣!​

 

超音速による衝撃波から──​

併せての、白刃の舞が浜辺を引き裂く!​

 

衝撃波と斬撃の同時攻撃!

速度の彼とサムライの連携によって、

無数の怪球が砕かれ両断されていく。​

 

接触による万象致死の効果を持つ

黒色の怪球は、人間を圧倒するはずだった。

ひとは、 に克つことはできない。​

 

見るがいい。

怪球体の群れは途絶えることがない。

永遠無限に押し寄せる死に克てるか?​

 

しかし。彼らは──​

 

学園都市最高。​

学園都市最強。​

統治会最大攻撃力と謳われた両名!​

 

世界に反旗を翻した雷電魔人を師とする、

学園都市最高最強の異能使い!

死した幻想に遅れは取らない!​

 

[Walter] 一体何者だこいつらは!

              砕いても砕いてもきりがない!​

 

瞬時に戦闘服へと換装し、

速度の彼が叫ぶ──​

 

[Berta] 物事には終わりがある。

            すべて斬り捨てればおのずと終わる!

            来るぞ、ヴァルター殿!​

 

[Walter] チッ。面倒だ、一気に片付ける!

              オルトロスなしで撃つぞ!

              再度併せろ!​

 

[Berta] 承知。​

 

速度の彼がサムライの肩に触れる。

触れるすべてを際限なく加速させる異能、

是が、ここで、合わさって──​

 

繰り出される合体攻撃は、

加速。加速。超加速の果て!

超音速移動による無数斬撃!​

 

[Walter & Berta] ──巨いなりしは千余の嵐 (サウザンドテンペスト) ッ!!​

 

[Jo] ──ッ!​!

 

大切断──​

黒色怪球体が上下に二等分断される!​

 

機械斧ヘパイトスは不可侵の怪球体を両断、

そのまま残骸さえ残さず大気に蒸散させる!

その威力は驚異!​

 

並の斧ならば逆に砕かれている。

だが、是こそ、幻想殺しの斧なれば!​

 

続けざまに──​

 

放たれる一条──!!​

 

射出される鋼鉄の矢、ひとつ!

碩学機械製の超大型複合弓アルテミス!

ここより放たれる一撃は、狙い違わず!​

 

夜気を引き裂いて、

音よりも疾く敵を仕留める!​

 

すなわち、無数の怪球体

物言わず憤怒の気配伴って迫る、黒色へ!​

 

着弾。炸裂──!​

 

鍛造された黒鋼 (クローム) の刃、アルテミスの黒矢!

すべて違わず黒色怪球の群れを砕く!​

 

[Jo] ……で、何だいあれ!

       そろそろ見当付いてるんだろ、エミー!​

 

[Emilie] 自動機械 (オートマトン) のようです。

            ただの機関機械 (エンジン) ではないようだけれど、

            要は、機械仕掛けの戦闘機械 (ウォーマシン)。

 

[Jo] レディの杞憂は大当たりか。

       あっちじゃマスターが大暴れだしさ!​

 

完璧な布陣、だった。

この両名を前に怪球体は為す術もない。​

 

長身の娘は己が異能の強化効果によって

友の身体能力を引き上げて弓を強化する。

弓の娘は、速射を続け──​

 

接近する怪球は悉く、

長身の娘が機械斧で両断する。​

 

まさに、完璧。

まさに、無敵。

ただの異形などに負けはしない。​

 

たったひとりで世界と戦う──

雷電魔人そのひとを師と仰いだ、両名!​

 

負けるはずがない。

倒れるはずがない。

何故なら、海の上に師の輝きは今も在る!​

 

[Emilie] 後方より別働隊が接近しています。

            そちら、お願いね。​

 

[Jo] まーかせて!

       まだまだ行けるよ!

       で、ヴァルターたちは大丈夫かね?​

 

[Emilie] 彼らであれば問題ないでしょう。

            左翼側の敵は殲滅できる。​

 

[Jo] あたしたちは?​

 

[Emilie] 当然、右翼側を殲滅!​

 

[Jo] 了解っと。ほーら、あんたたち!

       絶対エミリーから離れないこと!​

 

声、掛けられて──​

 

[Annabeth] は、はいっ。

                   絶対動かない動かないっ!​

 

ゴーグルの娘が頷く。

深々と何度も、まっすぐに。​

 

視界の端に見えるもの、

遠く海上に聳える巨人と相対する白銀色。

あれを、ずっと見ているから──​

 

黒色の怪球体を目にしても、

恐慌状態には陥らない。

恐怖に精神が殺されることも、ない。​

 

娘は、既に知っていた。

あの輝きが、誰のものであるか──​

 

そして──​

 

[Izumi] 大丈夫だよ、先輩。

            ネオンとテスラ君がいるんだもの。​

 

緑の髪の少女が呟く。

そっと、ゴーグルの娘に触れて。​

 

[Annabeth] へ……?​

 

[Izumi] あそこいるよ、ネオン。

            なんとなくわかる。なんでかな。​

 

[Annabeth] ネオンが……?

                   どこ、あの巨人の中?​

 

[Izumi] そう、あっちの大きいほう。

            ずっといるみたい。​

 

海にそびえる巨影を見つめて。

頭の上の“耳”を、何度か動かして。

少女は静かに呟く。​

 

ここにいない友達に語りかける。

すぐ、傍らにいるように。​

 

囁くように。

頷きながら、何かを感じて。​

 

確かめるように。

頷きながら、何かを信じて。​

 

[Izumi] そうだよね、ネオン。

            そのおじさん……でっかいおじさん。​

 

[Izumi] テスラ君に用があるんだよ。

            だから、学園都市までやって来た。​

 

[Izumi] それで、見つけたんだ。

            ネオンのこと──​