顔を、上げる──
そこには輝きがあった。
真なる暗闇でも見紛うはずのない、輝き。
あまりに、眩いものだった。
あまりに、尊いものだった。
故にこそ。
まともに見つめることができない。
だから、彼は、瞼を細めて。
輝きに声を掛ける。
自分の真正面にいる、少女へ。
浜辺に座り込んだ自分の前で、
ただ微笑む、輝きへ。
[Tesla] ……ネオン。
[Tesla] 私の未熟、私の迷いだ。
お前を危険に晒すことになった。
[Tesla] 私は、お前を──
そっと、触れる。
唇に──
輝きの少女の指先が、
優しく、それでいて咎めるように。
柔らかく触れていた。
体温さえないこの唇に、暖かな指が。
硬く強張っている唇に、少女の指が。
そっと、触れて──
[Neon] 喧嘩の続きをするの?
受けて立っても、いいですけど。
[Neon] 喧嘩なんて
いつだってできます。
[Neon] それと。そういう風に捉えないで。
あたしは今夜、証明してみせたんですよ?
[Tesla] 証明──
[Neon] あなたの味方だってこと。
正義の味方。ちゃんと、できましたよね?
そうだ──
そう、その通りだ。
もたらされた言葉に彼は衝撃を覚える。
言葉の通りだ。
特に不得手な巨大異形戦闘にあって、
こうも人型を留めて帰還できたのは。
少女が錨である、
というだけではない。
守るべきものと思っていた、少女。
ネオン・スカラ・スミリヤ。
それが──
否──
導かれたのはこの我が身だ。
間違いなく、少女は、彼の味方だった。
[Neon] そんなに驚かないで。
これから先、何度だって、あたしは
あなたを手伝うんです。
[Neon] あなたを手伝って、
あなたの味方で頑張ります。
[Neon] だってあたしたち──
ずっと、ずうっと一緒にいるんですよ。
[Neon] ──ね。
唇に触れる、指先。
暖かな。
その感触が離れていく。
そうして──
代わりに──
[Neon] それより、ほら。ね?
[Neon] ほら、見て──
それは──
息を呑むほどの光景だった。
先刻の最大雷電放射の影響か。
夜の空を、数多の輝きが舞っている。
フェルミ粒子痕が残る空。
真夜中にあって光放つ夜。
それは、確かに──輝きの夜 (シャイニングナイト)、だった。
けれど。
けれど。
違う、そうではないとも。
彼が捉えたのはこの空ではない。
空では、なかった。
輝きの夜を背に、
少女が、こちらに微笑んで──
[Neon] 見てください。
空、こんなに綺麗に光ってる。
手を、こちらへ──
[Neon] 喧嘩も、今夜はなし。
キスも、今夜はもうありません。
あたしは、今、あなたと。
向けて──
[Neon] ──あなたと、この空を見ていたい。
終